倒立する塔の殺人
- 作者: 皆川博子
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2007/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 127回
- この商品を含むブログ (77件) を見る
第二次戦争中から戦後にかけての女学校を舞台としたミステリ。
戦争での無慈悲で現実的な死と少女たちの愛憎世界がもたらす甘美で毒を含んだ死,戦前の独特な女学校文化の中での特権インテリ階級の少女達と,そこに紛れ込んだ庶民階層出身の生活感溢れるしかしそれゆえに異分子扱いされる少女達。異なる世界と価値観の対比と共存。作中暗示される男性同士の,女性同士の「倒立」した愛憎,敗戦を境に軍国教育から共産主義礼讃へ「倒立」する教育者たち。少女達が書き継ぐ作中作としてのリレー小説,さらに一人称で語り手の視点を変えながら物語りが綴られることで,今まで認識されていた世界が次々に「倒立」していく目眩く展開。最高です。皆川博子。