『あぶな坂ホテル』

あぶな坂HOTEL (クイーンズコミックス)

あぶな坂HOTEL (クイーンズコミックス)

10代の半ばからおよそ30年間,萩尾望都中島みゆきは,ともに私の偶像で有り続けている。しかし,両者が何らかの形で接点を持つことがあるとは,考えたこともなかった。『あぶな坂HOTEL』は中島みゆきの初期の傑作「あぶな坂」(デビューアルバム「わたしの声が聞こえますか」の第一曲であり,2004年のセルフカバーアルバム「いまのきもち」でも巻頭に置かれている)に着想を得た作品。この世とあの世のあわい黄泉平坂に立つあぶな坂HOTELは,生死のはざまで惑う人々が集う場所。女主人藤ノ木由良は,客人たちの思いを聞き取り,進むべき道に誘う。連作短編4作品が収録。心の奥の奥まで腑分けしていく心理描写とストーリーテリングの冴えは,いつもながらの萩尾望都。同時に,生死を扱う際ににじみ出る一種の諦観(特に第2話「女の一生」)は,作者本人がある程度の年齢を重ねたことで到達したものではないかとも思う。

しみじみしました。

それにしても,藤ノ木由良のビジュアルが,パラダイスカフェの頃の中島みゆきに重なるのは,単なるファン心理なのだろうか。

私の声が聞こえますか

私の声が聞こえますか

いまのきもち

いまのきもち

パラダイス・カフェ

パラダイス・カフェ