『華族』
- 作者: 小田部雄次
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/03/01
- メディア: 新書
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山田風太郎の明治物や,『人間臨終図鑑』などにも出てきて気にはなっていた。
知っているようで知らない華族。
後書きによると,本書以前に華族に関する基本的な通史は存在しなかったのだそうだ。
門外漢が入門編として求めていたというこちらの要求にぴたりとはまったわけで,たまたま書店でタイトル買いしたことを考えれば大ヒット。
個人的になるほどと思ったところ。
・華族は雑多な集団をまとめて成立したもので成立当初から矛盾があった。
・西園寺公望などは既に貴族と平民の対立の時代ではなく,資本家と労働者の対立の時代になったのだから,いまさら日本にヨーロッパ的「貴族」を作るのは時代錯誤と考えていた。
・実際に広大な土地と金融資産を恒産として有するイギリス貴族とは似て非なるものにしかならなかった。
・華族内の資産の格差は,華族を一つのまとまった階級とすることを困難としていた。
・GHQは華族制度の解体を考えていなかったが,敗戦後の衆議院の政党勢力の絶対多数が華族制度廃止を主張し,華族はその歴史を終えた。
・出自が様々であった華族は,華族制度解体後はバラバラになって以後まとまった大きな勢力を形成することはなかった。
あと,華族のお嬢様の写真が婦人雑誌をかざり,そのスキャンダルが一般庶民にとって格好の嗜好となったように,現在の芸能人に近い側面があったという指摘に合点がいった。