犬は勘定に入れません

姉妹編の『ドゥームズデイ・ブック』とは何から何まで対照的な作品。登場人物の何人かと舞台設定は共通しているのに,14世紀の黒死病期とを舞台に登場人物が次々に死んでいく前作と,19世紀末ヴィクトリア朝期の繁栄を背景に誰も死なない本作。性格を異にするテキストの混在と視点の移動で物語りを立体的に組み上げた前作と,あくまで一人称一視点をつらぬいた本作,悲劇の前作とユーモアの本作と全く異なった方向性の作品に仕上がっている。すばらしい。
歴史屋としては文句をつけたくなる箇所も散見するのだけど,それはそれ。評判に違わぬ傑作でした。